※ブログ更新※無知のヴェールとは何か?:合意形成についての哲学的思考実験

 

こんにちは、髙橋です。

 

今日は哲学におけるキーコンセプトをひとつご紹介したいと思います。

 

政治哲学における有名な概念、あるいは思考実験というべきものに「無知のヴェール(Veil of ignorance)」というものがあります。

 

これは、20世紀にアメリカで活躍した哲学者であるジョン・ロールズが生み出した概念です。

「ジョンロールズ」の画像検索結果

ロールズは哲学の中でも、主に倫理学や政治哲学を研究した哲学者で、その主著『正義論(A Theory of Justice)』の中で「無知のヴェール」が論じられました。

ちなみに、この『正義論』は800ページ以上もあるまさに大著で、いわゆる「凶器として使える本」のひとつと言えるでしょう。

他にも、有名な本ではトマ・ピケティの『21世紀の資本』も凶器としてちょうど良い大きさ、重さだと思います。

私は学生時代に『正義論』を何度か図書館から借りて部分的に読んだことはありますが、全体を通して読んだことはありません。

 

 ▼

 

話を戻します。

さて、

この「無知のヴェール」、その内容としては以下のようなものです。

 

まず、ロールズが想定している状況というのは、社会のルールについての合意形成の場面です。

現実ではその国のその時代の政治制度に則り、手順に従ってルールや制度が形成されていきます。

ある一つのルールが万人にとって有益であるということは少なく、むしろある立場の人々にとっては正しいあるいは有益で、別の立場の人々にとっては正しくないあるいは不利益という場合がほとんどだと思います。

実際、正不正や有益不利益というものは、完全に公正・公平な視点からの判断によってというよりは、政治的な力学、力関係によって左右されるものです。

月並みな議論で言えば、日本の政策が高齢者有利なものになりやすいのは、有権者の人数比や投票率の多さなどの点で高齢者の方が政治的に優位な力関係にあるというものがあります。

 

 ▼

 

ロールズが考えているのは「なるべく公正・公平に社会のルールについて合意形成するにはどうすればよいか?」ということです。

そして、ここでロールズが導入した概念装置が「無知のヴェール」です。

この「無知のヴェール」は、あらゆる人が自らそして他者についてのアイデンティティに関わる知識・情報を完全に覆い隠し、奪ってしまう存在です。

ここでいうアイデンティティには、「人種」「社会階級」「性別」「年齢」「宗教」「職業」「資産」「能力」などなど、本当にたくさんのものが含まれます。

そういったアイデンティティに関わるすべての知識が失われた状態を「原初状態」と呼びます。

つまり、「無知のヴェール」はこの原初状態をつくりだすための実験装置と言えます。

 

そしてこの「無知のヴェール」によってつくりだされた原初状態でこそ人々は最も公正・公平に合意形成をすることができるとロールズは考えました。

というのも、「無知のヴェール」に包まれた状態で合意形成する場合、多くの人が「自分はもしかしたら社会的に不利な立場の人間かもしれない」と考えて、社会的に不利な立場にある人たちを配慮した決定を選択する可能性が高くなります。

このように、「無知のヴェール」が公正・公平な合意形成に資する可能性があることをロールズは示しました。

「無知のヴェール」で考えられている状況は実際には実現しえないものなので、これはあくまで思考実験であり、また人間観の提示だと考えられます。

 

 ▼

 

今日は、ジョン・ロールズの「無知のヴェール」という哲学上のキーコンセプトをご紹介しました。

この議論は思考実験であるとともに人間観の提示であるともお伝えしました。

つまり、ロールズの人間観では、人間は「無知のヴェール」によってアイデンティティの失われた状態では、「自分は不利になるかもしれない」という心理状態になると考えられています。

おそらくこの人間観にはさまざまな批判があると思います。

 

皆さんはどのようにお考えになりますか?

「無知のヴェール」によって人間はどのような意思決定をすると思いますか?

ああ、学ばな。。。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA